プロダクト開発以外から事業を支えるエンジニア〜サクセスエンジニアリングチームの取り組み~
こんにちは。株式会社ニーリー サクセスエンジニアリングチームの中村俊博(なかむらとしひろ)です。
今回は開発組織に位置しながら、プロダクト開発以外から事業を支えているサクセスエンジニアリングチームについて紹介します。
プロダクト開発「以外」ってなんだろう?と思われた方も多いと思います。具体例を挙げつつその問いにも答えていきます。
サクセスエンジニアリングチームとは?
サクセスエンジニアリングと聞いて、ピンとくる方はなかなかいないと思います。ニーリーでは2023年2月にチームを発足いたしました。
もともとチーム発足当初はEUC(End User Computing)チームという名前でしたが、2023年9月にサクセスエンジニアリングチームに名前を変更しました。
"サクセスエンジニアリング"という名称は、カスタマーサクセスを目指す社内のメンバーを支えるために、エンジニアや開発組織の立場からカスタマーサクセスの質を上げたい、近い存在でいたいという想いで決めました。
当時はフィットした名前がなかなか思いつかず、ChatGPTで似た役割を担った部署名を50ほど上げ、最終的にはみんなで集まって決めました。
(個人的には略称が「SE(システムエンジニア)」になって誤解を招きそうだと思ったのですが、今はSEで染みついていますw)
プロダクト開発以外から事業を支える?
サクセスエンジニアチームはミッションとして
KPIを上げるための機能追加・改善の開発をPark Direct(パークダイレクト)本体以外から実施していく
というものを掲げています。
Park Direct本体以外とは、プロダクトや事業を支えるツールやシステムの開発を指します。ニーリーはPark DirectというSaaSの提供により、モビリティ分野のDXを推進しています。この事業において、Park Directというプロダクトは最重要である一方で、プロダクトだけで事業は回りません。例えば、ニーリーではPark Direct利用者のサポートをする、カスタマーサクセス部門が存在します。
カスタマーサクセス部門では、“電話を受ける・かける”、“問い合わせ内容を記録する”などを日常的に実施するわけですが、そのためのツールは自社プロダクトを利用しているわけではなく、ZendeskやAmazon ConnectなどのSaaSを利用しています。ただ、SaaSといっても完全にそのまま利用することができるわけではありません。事業に合わせたカスタマイズなど戦略に合わせた対応が必要になり、それに対応して開発するメンバーが必要になります。
このメンバーこそが、サクセスエンジニアリングチームです。
このようにPark Directというプロダクトではなく、プロダクトや事業を支えるツールなどの開発、改善などをサクセスエンジニアリングチームが担っています。
これは一例で、サクセスエンジニアリングチームの領域はSaaSのカスタマイズに留まりません。実際にどのようなことをしているか、具体的にご説明します。
システム化の“隙間”を埋める
サクセスエンジニアリングチームのテーマとして
システム化の“隙間”を埋める
を掲げています。
この“隙間”とは、以下の3つを定義しています。
1.開発が追いつかないもの
Park Directはかなりのスピードで成長をしています。導入企業や利用者数も日々ものすごいスピードで増えており、そのサービスを拡充するために日々プロダクトのグロースに勤しんでいます。
開発メンバーは社内からの要望や導入企業からの要望などをビジネス部門と会話する機会を設けています。この点については以前公開した「エンジニア対談 開発組織の魅力“issueドリブンな開発”とは?」に記載していますので、合わせて読んでいただけると幸いです。
一方でこの要望すべてに対応できるわけではありません。事業の成長スピードに伴って数多くいただくため、どうしても優先順位をつけざるを得ず、対応するとしても大きな案件であれば少し待たせてしまうケースが出てきます。
ただ、この課題に対して何もせず放っておくわけにはいきません。そこでサクセスエンジニアリングチームでは、その間にツールを作ることで暫定的な運用ができないかなどを検討し、アプローチしていきます。
例えば、作業効率化ツールです。
Park Directでは手動でオペレーションしているものがあるため、その効率化を目指していますが、すべてを優先度高く開発できるわけではありません。そこで、サクセスエンジニアリングチームではそのオペレーションの自動化ツールを構築しています。具体的な例は後述の「現在取り組んでいること」の2つ目をご覧ください。
このようにプロダクトの開発をする/しないではなく、第3の選択肢として事業を支える役目を担っています。
2.Park Direct本体では対応できないもの
これは前述したSaaSが当てはまります。具体的な例は後述の「現在取り組んでいること」の1つ目をご覧ください。
そもそもプロダクトでは対応が難しいものや、発生頻度や効果、コストなどを勘案し、プロダクトでは対応しないという選択もあります。昨今は大変便利なSaaSが増えてきましたので、ニーリーでも惜しみなく利用しています。アンケートフォーム作成・収集ツール、メール・SMS送信ツール、管理画面ローコードSaaSなど分野も様々です。
サクセスエンジニアリングチームは課題を解決するために手段を選びません。前述したSaaSだけでなく、ローコード/ノーコードツールを利用することや、実際にコードを書くケースもあります。必要があれば、新しい技術の選定なども検討していきます。
3.先行してトライアルするもの
事業として対応すべきだが導入企業や利用者の反響が読めないなど、まずはトライアルとして実施していきたい場合にもサクセスエンジニアリングチームの出番です。
例えば、利用者へ何らかのご案内を月次で行いたいとします。
このとき、
誰に送るのか
どのような文面で送るのか
いつ送るのか
どのような手段で案内するのか
など決めなければいけないことが多く、かつ正解がわからないことが多いです。
特にご案内をすると、導入企業や利用者から問い合わせをいただくケースも多く、問い合わせを受ける社内の状況も加味した上での対応が必要となります。
そこで、プロダクトとして実装するのではなく、トライアルとしてツールを構築、運用します。そうすることで、「この案内文は先月〇〇という反響をもらったので伝え方を変えよう」「今月は〇日に〇〇があるから、その日の案内は避けよう」などアレンジをしながら、プロダクト化に向けた検討をしつつ、継続的に価値を出すことができます。
サクセスエンジニアリングチームではツールを構築して提供するだけでなく、導入企業や利用者の状況を踏まえ、社内と連携を取りながらあるべき形を探していく、そんな取り組みをしています。
現在取り組んでいること
具体的に現在どのようなことに取り組んでいるか、一例を紹介します。
1.Amazon Connectを活用したオートコールツール
Amazon Connectを利用した開発は前述した「2.Park Direct本体では対応できないもの」にあたります。ToC/ToBに対して価値提供を行うニーリーでは利用者を支えるカスタマーサクセス部門だけでなく、導入企業を支えるクライアントサクセス部門も存在します。
2つの部門ではフルリモートの環境下で電話を受けたりかけたりしていますが、それを実現している仕組みがAmazon Connectです。
Amazon Connectでは設定するだけでインターネットを利用した電話通話が可能です。さらに特定の電話番号に電話をかけると自動音声が流れる、ガイダンスに従って自分が確認したい内容の番号を押すとオペレーターにつながる、というような自動応答システムも簡単に構築することができ、Park Directでも活用しています。
その中でも2023年に力を入れてきたのが、オートコールツールです。
オートコールとは簡単にいうと、対象者に一括で電話をかけて自動音声を流すものです(世論調査の電話をイメージしていただくとわかりやすいです)。
Park Directでは、電話を受けることはもちろんですが、こちらから確認がある場合に電話をかけることもあります。しかし、かける場合は利用者が出られないケースも少なくありませんし、必ず折り返しをしていただけるわけでもありません。かといってメールで連絡してもご返信いただくのが難しいときもあり、この利用者の確認を取る運用に大変苦労していました。
そこでこのオートコールを導入し、以下をご案内しました。
ご案内したい内容がある
可能であれば、Park Directに問い合わせしてほしい
電話がほしい場合は、出られる時間帯を回答してほしい
すると、今までつながらなかった方から、お電話をいただくことができたり、電話がほしい旨の連絡があったりと、想像以上の反響をいただきました。理由としては何点かあると思いますが、一番は自動で電話をすることができるので、そもそもの電話をかける母数が増え、対象者が増えてもコンスタントに電話をかけられるようになったことが影響していると思います。具体的には電話は1人で1日対応しても100人ほどしかかけられませんが、オートコールを利用すれば5分で200人に電話ができます。
今となっては、ご案内内容が異なるオートコールを5つほど稼働させており、どれもオートコールとの業務棲み分けにより注力すべきところに時間を割けられるようになったと喜ばれています。
2.RPAを活用した業務効率化ツール
RPAでの開発は前述した「1.開発が追いつかないもの」によく利用されます。
Park Directはエンドユーザー(駐車場の利用者、不動産管理会社)だけでなく、社内でも利用されています。前述した2つのサクセス部門はまさにPark Directのヘビーユーザーで、カスタマーサクセスは利用者の登録・契約情報などを頻繁に参照しますし、クライアントサクセスは不動産管理会社の一部業務を代行することもあるので、駐車場の登録作業を行ったりと、利用用途は多岐に渡ります。
それらのオペレーション、特に定期的に発生する更新作業は利用者、導入企業が増えることで多くなってきており、社内メンバーの負担にもなっていました。
そこで、業務効率観点で導入したのがRPAです。
1名1名、画面で対象者を検索し、情報を確認、更新処理を実行というオペレーションに対して、最終的な実行以外を自動でできるようにツールを構築しました。
これによって、数十名の更新処理に1日近くかかっていたところを1時間まで削減することができました。
RPAはエンジニアでなくても開発できるように作られているため、構築に時間をかけずスピーディに提供できるところもメリットです。
より、ビジネス部門に近い存在に
前述の通り、チームの想いはエンジニアの立場から社内メンバーのサクセスを支えていきたいというものです。
昨年は組織を立ち上げた初年度ということもあり、顕在化している課題も山積みで、それを愚直に対応していくことで事業への貢献ができていました。ですが、これからは業務プロセスを疑うところから入り込んでいかなければ目先の利益だけの貢献になり、長期的には価値のないツールの開発になってしまいます。
プロダクトの要望はイメージがしやすいため出しやすいのですが、プロダクト以外の要望というのはそうではありません。「え、それってお願いしていいんですか」「そんなことできるんですか」という言葉をよく聞きます。つまり、より事業数値を伸ばすことができる開発があるかもしれないと考えています。
ニーリーのエンジニアは、事業に染み出すことが当たり前のカルチャーになっていますが、サクセスエンジニアリングチームは、より近い存在で事業に減り込むくらいまで入り込んでいくべきと考えております。
顕在した課題だけでなく、潜在的な課題を見つけ、手段問わず解決していく。まだまだある可能性に日々ワクワクしています。
最後に
ここまで読んでいただきありがとうございます。サクセスエンジニアリングチームの魅力は、大きく2つあります。
依頼されたものを作るのではなく、事業側へ染み出していく
課題を解決するために手段は選ばない
私は前職、SIerで働いていましたが、特にこの2点には悩まされていました。課題は見えているのに依頼がないので行動ができない、解決するパッケージ・手法が決まっていて最善を選択できない、ということはよくあるのではないでしょうか。
ニーリーでは、ビジネス部門との壁を感じず、また互いにリスペクトもあるため、一緒に事業を伸ばしていくという実感を持ちながら、進めていくことができます。エンジニアがビジネスサイドの目標達成を心から喜べるという経験もなかなかないと思います。
また、より事業側へ染み出していくためにもチームの拡大は必須です。サクセスエンジニアリングチームは私も含め4名いますが、メンバーがまだまだ足りません。是非、これからのチャレンジを加速させ、一緒に事業を伸ばしていくメンバーにジョインしていただきたいです。
サクセスエンジニアリングチームだけでなく、ニーリーの開発組織に興味を持った方は是非カジュアル面談でお話しさせてください!
株式会社ニーリー プロダクト本部 クライアント・グロース本部 クライアント・グロースG 中村 俊博 Nakamura Toshihiro
2011年に三菱総研DCS株式会社へ新卒入社。約11年の間、学校、医薬品、化学系など様々な業界を担当。入社当初はエンジニアとして手を動かしていたが、後半は常駐案件のチームリードや基盤更改案件のPMを担当。案件の切れ目もあり、もっとチャレンジがしたいと思い2022年8月にニーリーへ入社。2児の父、趣味はテニスで月1を目標にしている。
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