1年でメンバーが500%増。成長フェーズのニーリーがコーポレート強化に注力する理由
こんにちは、ニーリーCHROの髙橋俊樹です。
ニーリーは「社会の解像度を上げる」をミッションに掲げ、月極駐車場のオンライン契約サービスを提供するモビリティSaaS「Park Direct(パークダイレクト)」を展開しています。2019年にスタートした事業も4年目を迎え、事業も組織も急拡大のフェーズに入っております。
今回は、普段あまりフォーカスされないコーポレート組織について、強化している背景や担う役割、組織としての今後の展望などをお話ししてみたいと思います。
■ニーリーのコーポレート組織体制
ニーリーの従業員数は、2023年5月末時点で約140名。そのうちコーポレートメンバーは約2割を占めています。
ニーリーのコーポレート組織は大きく分けて以下4つのセクションで構成されています。
経営企画
人事
ファイナンス
法務
特に2021年から2022年にかけては、人員数を約500%増員し、組織の強化に努めてきました。これから拡大していくというフェーズのスタートアップにおいて、ここまでコーポレート組織の拡大・強化に力を入れるケースは珍しいと言っていただくことが多いです。特にこのフェーズのスタートアップでは「コストセンター」として、優先度を下げられがちなコーポレート組織になぜ我々が投資を踏んでいるのか?会社全体のなかで担う役割の重要性や具体的な動きについてお伝えできたらと思っています。
■コーポレートが担う役割:①組織の意思決定力の強化
スタートアップは意思決定の速さが命
いわずもがな、組織の意思決定の速さが我々スタートアップにおいて非常に重要です。意思決定の速さを担保する方法は、企業フェーズによって変わると考えています。賛否両論あるかもしれませんが、従業員数が少ない初期のフェーズでは、トップダウンでの意思決定が一番速いと考えています。しかし、会社が成長期に入ってくると、従業員数や部門数が増え、トップがすべてを把握することが難しくなり、逆にスピードが遅くなることもあります。
意思決定の鈍化を防ぐことがコーポレートの役割
成長フェーズの真っ只中のニーリーにおいて、意思決定の鈍化を防ぎ会社の成長を促進するためには、意思決定しやすい環境を作ることが重要です。そして、その環境を作れるのがまさにコーポレート組織だと考えています。組織が大きくなってから対策を考えるのではなく、スピードを落とさないために事前にコーポレート組織の強化を推進していました。
意思決定に必要なものは、一定のルール、基準/方向性、プロセスと考えています。人事制度がその一例です。人事制度(=ルール)がないと、各マネージャーが自分ですべて0から部下に対する評価をし、育成方針を考え、実施しなければなりません。それではあまりにも時間が掛かってしまいますし、部門間での評価や育成のバラつきも懸念されます。
そうした事態を起こさないように、ニーリーの組織において大事なことは何か、どういうお仕事を高く評価するのか、を明確にし(=基準/方向性)、その基準と方向性を元に制度を策定します。基準/方向性を定めてルール化することにより、不要な作業や目標とずれた業務に費やす時間をなくし、コミットすべき部分に対して時間を掛けることができるようになります。
プロセスは意思決定の仕組みを整えることです。例えば毎年1月と7月に組織長があつまってメンバーの等級や給与をこうやって決める、という“会議体”を整えておく。それだけで、組織のリズムが出来上がります。リズムがないと、等級を上げたいメンバーが出てくる度に会議をセッティングしなければなりませんし、出席者の予定が合わなければ会議の開催が先延ばしになり意思決定が遅れてしまいます。基本的な会議体というプロセスが定義されていることによって、意思決定のスピードを保つことができます。
■コーポレートが担う役割:②事業の成長ラインのマネジメント
もう1つ、コーポレート組織が担う役割に「事業の成長ラインのマネジメント」があります。これはどういうことかというと、会社全体を俯瞰して事業成長における歪みを早期に察知し、解消できるかということです。
特に、急激に事業が成長しているフェーズにおいては、現場の最前線で日々業務に奮闘していると、どうしても事業全体で発生している問題やその予兆に気付けないことがあります。そこで、事業から一歩引いたところで会社を俯瞰し、成長ラインの鈍化や歪みを察知できるのが、コーポレートだと考えています。
また、成長ラインの鈍化や歪みを察知するだけではなく、改善できるように働きかけるのもコーポレートの役割です。例えば、成長を阻害する要因となっているプロセスを改善する、現時点では人員は足りているけれど、半年先のことを見据えて今の段階から人員を増加するなど、成長が鈍化してから動くのではなく、将来を見据えて必要な手を打っていく、それが「事業の成長ラインのマネジメント」です。
予兆に気付くために~定点コミュニケーションと正しい会議体の設定~
これまでは遅延やミスなく進んでいた業務が、あるときから普段と違う様子になっていたら、それは事業成長ラインに変化が起きているサインです。
それに気付くためには、変化に気付ける仕組みを作っておくことが重要です。
<定期的なコミュニケーションの仕組み>
日々の1on1や会議体の設定など、定期的に経営・マネージャー・メンバーが相互にコミュニケーションをとれる機会を作ることで、変化の兆しに気付くことができると考えています。
毎日顔を合わせている家族のちょっとした体調の変化には気づきやすいように、定期的に顔を合わせる機会を作っておくと、参加メンバーの声色やテンションがいつもと違うなど、何かが起きているなというちょっとした違和感に気づくことができます。
<正しい会議体の設定>
もう一つはきちんと会議体のアジェンダを設定して、何についての議論をするのかという仕組を整えることです。
アジェンダに対する進捗報告の精度が下がっていたり、話すべき議題が上がってこなかったりなど、正しく会議が回っていないときには必ず何かしらの兆しがあります。
もう一点、非常に大事なポイントとして「コーポレート組織が事業にとって役に立っている」必要があります。コーポレートに相談したら業務プロセスが改善された、人員が増えて業務の遅延がなくなったなど、「コーポレートに話せば何とかしてもらえる」という期待を社内のメンバーに持ってもらうことが、常に情報の「原液」が流し込まれている環境づくりに欠かせないことです。
■意思決定力強化のための「仕組み化」
23年上期(1月〜6月)は、コーポレート組織全体として「仕組み化」に注力しました。これは、今年実施した大型の資金調達によって事業成長にレバレッジをかけるための仕込みの観点と、100名を超えてきた組織の意思決定力鈍化を防ぐ狙いで仕掛けました。
「仕組み化」と言うと、一般的にはフローやマニュアルの作成などを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、フロー・マニュアルはあくまでアウトプットでしかなく、作成したフローがしっかり現場で機能するように整えるのが「仕組み化」であり、コーポレートが担うべき責任でもあると考えています。
その観点でも、運用の細部までウォークスルーすることや、仕組み化したことがきちんと当初の目的通りに機能しているかのモニタリングは意識的に行い、仕組み化を推進しました。
上期に各種業務の型化ができたことにより、実際に下期(7月〜12月)はよりスピード感を持って事業成長のための仕掛けができていると感じています。
■今後のコーポレート組織の目標
今後のコーポレート組織は、より事業の成長にレバレッジを掛けていく存在になりたいと考えています。コーポレートは事業からは一歩引いた存在であるとは言いつつ、コーポレート主導で売上や利益に貢献できることはいくらでもあると思っています。例えば広報やPRの力で会社の認知度が上がることもそうですし、採用の力で優秀な人を採用できた結果、その人が売上を上げられるようになることもそうだと思います。
将来的には「ニーリーのコーポレート出身の人は本当に優秀だよね」と言われるような、一人一人が個として強い組織になることが理想です。各部門が会社の利益を考えた上で、部門の在り方を考えていくような形を作っていきたいと思っています。
株式会社ニーリー CHRO
髙橋 俊樹 Toshiki Takahashi
2015年株式会社リクルート住まいカンパニー(現株式会社リクルート)に入社。自社採用担当として新卒採用業務を一貫して担当したのち、採用統合における採用要件定義の策定や選考設計など含めた全体統括を務める。2018年より親会社(株式会社リクルート)の人事戦略部に出向。PMとして全社におけるデータドリブン人事を推進し、「AIを活用した配置の最適化/自動化」案件にて全社表彰(FORUM)を受賞。2019年、同社美容事業における事業企画に異動し、中期事業計画の策定を担当。2021年、同部署のGMに就任、会社統合を踏まえた中長期戦略の立案・実行を牽引。2021年10月より、ニーリーに参画。CHROとして採用/労務/広報/総務の部門を管掌。