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事業を「多次元化」させる。投資家の村上誠典氏が語る、これからのニーリーに必要なこと

ニーリーで年2回開催される「全社キックオフミーティング」。今回のFY24上期キックオフミーティングでは、ニーリーに最初に投資いただいた「THE FUND」創設の村上誠典氏をゲストにお呼びし、「なぜPark Directをローンチしてすぐのニーリーに投資いただいたのか」「ニーリーがこれから成長拡大するために必要なことは?」などをニーリー従業員向けにお話しいただきました!


プロフィール

投資家 村上 誠典氏
兵庫県出身の未来投資家。ゴールドマン・サックスにてM&A、投資、資金調達、IRの専門家としてグローバル企業のコーポレート・アクション、転換を数多く経験。退職後、未来世代に引き継ぐ新産業創出を目指し、ポストIPOスタートアップを掲げ、シニフィアンを創業。急成長する上場・未上場テクノロジー企業の経営に、投資家、取締役、アドバイザーなどの立場で関与し、成長を推進。国内初グロース・キャピタル「THE FUND」創業。現在、スタートアップ投資を通じて、持続性、社会性、ガバナンスを重視したエンゲイジメント活動、経営力向上、人材育成に注力。株式会社SHIFT社外取締役、株式会社SmartHR社外取締役、株式会社BitStar社外取締役他。著書『サステナブル資本主義 5%の「考える消費」が社会を変える。』


株式会社ニーリー CHRO 高橋俊樹
2015年株式会社リクルート住まいカンパニー(現株式会社リクルート)に入社。自社採用担当として新卒採用を担当したのち、採用統合における採用要件定義の策定や選考設計などを含めた全体統括を務める。2018年より親会社(株式会社リクルート)の人事戦略部に出向。PMとして全社のデータドリブン人事を推進し、全社表彰(FORUM)を受賞。2019年、美容事業の事業企画に異動し、中期事業計画の策定を担当。2021年GMに就任し、中長期戦略の立案・実行を牽引。2021年10月より、ニーリーに参画。CHROとして採用/労務/広報/総務/戦略人事の部門を管掌。

投資の決め手は「社会インフラとなる可能性」を秘めたPark Direct事業


高橋:代表の佐藤とも以前対談していただき、noteでも公開していますが、改めてニーリーに興味を持たれたきっかけと、投資を決めた理由についてお伺いできますでしょうか。

村上氏:

一つ目のポイントとしては「社会インフラになれる会社」だとおもったところです。そもそものお話しですが、私自身、普段から投資をしたい、お金を増やしたいということよりも、ビジネスを通じていかにいい未来を作っていけるかということが本質的に大事だと思っています。投資という手段を通して様々な企業とお付き合いをさせていただいていますが、その中で3年半ほど前にニーリーさんとご縁がありました。ニーリーにとっては初めての外部投資家となりますね。

ニーリーには運営していた「THE FUND」を通じて投資させていただきました。当時国内でもかなり大型のファンドで、先行して投資していたのが「SmartHR」など、リード投資で数十億規模の投資をするためのファンドだったのですが、当時のニーリーは本当にまだPark Directの立ち上げ期でメンバーも少なかったので、正直他の投資先とは判断の根拠の違う投資だったんですね。大きく育つ可能性のある企業に早い段階から経営に関わっていくような投資も考えていたタイミングだったので、最初のケースとしてニーリーに投資させていただきました。

これはよく聞かれることなんですが、なぜその段階のニーリーに投資したのかというと、それは現在のニーリーの成長と拡大がほぼ予想できたからなんです。Park Directというサービスは「近い未来にこうなる」という成功する確信が自分の中でかなりしっかりあったというのがポイントです。とくに、これからニーリーがチャレンジしていくフェーズにこそ、私は可能性をすごく感じています。まさに社会インフラになっていくフェーズですね。

ニーリーが事業を展開する業界は、自動車ユーザー、駐車場オーナー、不動産管理会社、保証会社などステークホルダーが多く、その分非効率なことも多くありますが、私が思い描く未来では、ステークホルダー同士が徐々に繋がり、垣根が取れていくはずなんです。ただの駐車場ではなくインフラ、ただの車ではなくエネルギー、アセットオーナーではなく社会の基盤を支える人といったように、ステークホルダーの関係性や役割が変わっていく中で、当時はニッチに見えたPark Direct事業がその中心にはまり、インフラとしてグロースしていくと感じました。

今はニッチに見えるけれど、会社が掲げているミッション「社会の解像度を上げる」をどんどんやっていくと、驚くほど社会やステークホルダーの価値観をアップデートしていける存在になる可能性が秘められていると思っています。

もう一つは代表の佐藤さんの人柄で、彼が社会インフラを作るために目線を上げて成長していく起業家だと思えたことも投資を決めた理由です。壮大でワクワクすることを言っていたとしても、発言している人の価値観や人生観とズレていると事業はうまくいきません。その点、ニーリーは社会インフラとなることに対する責任感と目線を経営のトップである佐藤さんが持っているので、有言実行する可能性が高いと感じることができましたね。

高橋:「この会社なら社会インフラになるかもしれない」と思うポイントはどこでしょうか

村上氏:

マーケットシェアを取れるポテンシャルのあるサービス、プロダクト、業界であるかということです。「最初はニッチなサービスだった」ということがマーケットシェアを取りやすい要素となりますが、シェアを取れたとしても、広げていけるほどのマーケットがないと意味がありません。投資は「土地を押さえる」イメージです。例えば、東京が発展することを予見できて、数百年前に土地を買い占めておけば、何もしなくても成功できますよね。つまり、成長しそうな土地を早く押さえることが大事なんです。しかし、東京に土地を持ったとしても範囲が狭いと価値を生み出すことは難しい。その点、ニーリーは大きなマーケットに向き合っていますよね。

前職からもIOTや、SaaS、モビリティ関連の事業を見てきていますが、モビリティ業界ではまだ誰もシェアをおさえきれていません。その中で、ニーリーがPark Directを通じてマーケットの高いシェアをおさえられれば、広がりが出てくる可能性があると思います。

ニーリーは、EV、エネルギー、脱炭素、モビリティという広いマーケットに広がりうる土地なんです。そうなれば、かなり面白い会社になるだろうという期待感があるので、私が不動産鑑定士だとすると、「これは東京の一等地だ。ここの土地は買っておいて間違いない」と、こういう感覚でした。


高橋:村上さんから見た代表佐藤とはどのような人物ですか

村上氏:

失礼ながら自分に似ているところがあるんではないかなと思っているんですが(笑)、遠くで見た時と近くで見た時が違うタイプの人かなと。しっかり話してみた方が魅力が伝わるタイプの人だなと思っています。

また、これが好きだ得意だという人は逆に広がりがなかったり得意分野以外はパフォ―マンスが下がったりするのですが、佐藤さんは得意なことはしっかりやるけれど、それ以外の分野に対しても、苦手意識を持たずに得意分野と同じパフォーマンスを発揮できる方法を模索する意識が高い印象です。

実際に話してみると分かりますが、どんな分野のハイレベルな意見に対しても佐藤さんはしっかり打ち返してくれます。だから、苦手な分野が少ないという前提で、どんどん議論を発展させていける経営者だと思いますね。

数多くのスタートアップに投資してきた村上氏から見る「ニーリーで働くおもしろさ」

高橋:現在、ニーリーでは営業生産性を上げるための仕組み化に注力しています。一方で、スタートアップならではの「カオスを楽しむ」フェーズと逆行していると思われる可能性もあると考えています。今のニーリーのフェーズの印象、また、今ニーリーで仕事することのおもしろさはどのあたりにあると考えますか。


村上氏:

むしろニーリーはこれからもっとカオスな状況になると思います。

残念ながら、すべてのスタートアップが成長するわけではありません。成長しない要因はさまざまですが、例えば取り組んでいることや組織がアップデートされないと、在籍しているメンバーからすれば同じことを繰り返すことになります。すると、成長も停滞するようになり、これなら大企業と変わらないのではないかと思ってしまいます。

成長はしてるけれど広がりに欠けるというモノライン(単一で一次元)のビジネスの場合、成長してるので売上が10億、100億と急成長するカオス感は多少あるけれども、同じことの繰り返しでは飽きる要素が出ますよね。最悪のケースは、「モノラインであり、かつ成長しない」という状況となり、エキサイトメントがなくなることだと思います。

ニーリーはその真逆ですね。会社としての成長を皆さんも感じられていると思いますが、ニーリーの場合は、事業が多次元でマルチラインに広がる余地も大きいんです。投資家の立場として、私も事業が広がっていくことに期待していますし、ニーリーは広げていかなければならない会社です。そういうポジションにいる会社で仕事をできるのはおもしろいですよ。なぜなら、そんな企業はすごく少ないから。ユニコーンになる企業は、ごくわずかですよね。かつユニコーンになる可能性を秘めていても、展開領域が広い企業と狭い企業もあります。この両方を満たす会社は少数ですが、ニーリーにはその可能性がある

これまではモノラインでビジネスを立ち上げて成長させていく中でのカオス感があったかと思いますが、ここからは創ってきたものを自己否定し、磨きながら一次元だった事業を多次元に変えていくフェーズでの新たなカオス感が生まれるでしょう。

組織的にも、これまではグロースすることを考えて、意図的に複雑さを加えすぎずに事業や組織の戦略を組んできたのではないでしょうか。事業が多次元化していくと、組織戦略も一気に多様化します。多様化というのはバックグラウンドや考え方、働き方が違う人が増えてくる。そうするとオペレーションも多様化し複雑さが増します。同じことを、同じ人とやるのが最も簡単ですが、それでは皆さんから成長機会を奪いカオス感もなくなってしまう。

ニーリーはそれをすると成長が望めません。広げながら、広げられる人材を確保しながらしっかりスケーラブルな組織を作っていくためには、意図的に多次元に変化していくことを経営として取り組んでいく必要があります。現場にいればこの変化を如実に感じるはずなので、カオスであり、エキサイトメントがあります。

大企業ではひとつのファンクションを求められるため、「多次元×多次元」を繋ぎながら結果を出してく経験を積めるのは、やはりスタートアップ、その中でも成長余地の広い組織でしか味わえません。

ニーリーでは、この新たなカオス期が今後2〜3年のフェーズになるのではと予想しています。やっていることが変わっていくなと思える実感を持っていただきたいですし、今が、その入り口のタイミングだと思います。

多次元に変化する会社では、組織の成長スピードが個人の成長を上回る

高橋:ありがとうございます。Park Directを多次元に広げていく時のコンセプトとして大事になることは何でしょうか

村上氏:

多次元に広げるためには、まず足場をしっかり固めることが大切です。プロダクトやUI、データ管理など、トップランナーとして一つひとつの質を高めていくべきです。単一のサービスだったらそこまで必要ないかもしれませんが、多次元で広めていくには質を高めてより深い顧客接点が必要になってきます

また、これからの組織運営で「最低限のことだけに取り組む」状況が続くと、マンネリ化して組織も強くなりません。急成長する組織というのは大体のケースで、自分の成長よりも組織の成長が早いものです。

大企業は成長速度が緩やかなので、自分の成長が勝つことが多いでしょう。しかし、急成長するスタートアップは多くの人にとって会社の成長が勝つ。個々人が成長するためには、会社の成長スピードについていくだけではなく、自分のポジションやロールをいい意味で変えていくことが当たり前にできる必要があります。自分の成長が追いついてないなと感じたのであれば、他の人に替わる、もしくは新たに人材を採用するということを組織としてやっていける会社でないと成長しません。

今後、自分よりも成長している組織だから残るという人もいれば、辞める人も出てくるでしょうが、このふるいは残念ながら起きます。ふるいの中でどう判断するかは個人の意思を尊重するべきなので、会社としては個々人が判断をスムーズにできるようサポートしていかなければなりません。ニーリーは多次元になっていくことが必要不可欠な会社なので、非常に高いレベルでふるいが起きる可能性があります。皆さんも成長しますが、それ以上に会社の成長が早いということを理解することが大切です。急成長の組織に食らいついていくと、皆さんも引っ張り上げられて大きく成長するというポジティブサイクルが生まれます。本当にいい組織では、そういうサイクルが生み出せていると思うので、ニーリーもそんな会社になってほしいと思います。


高橋:組織と個人の成長のスピードの話は大変興味深いです。組織の成長に合わせていくために、マネジメント側としてやるべきことがあると改めて思いました。続いては従業員からも質問をいただいています。

社員からの質問①:メンバーが組織の成長についていく以外に、成長する企業の共通点はありますか。

村上氏:

先ほどの回答とは違う観点から2つお答えします。まずは投資家の観点からいうと、マーケットの可能性に加えて、タイミングの良さと実行力があるかどうかです。

自分たちがやりたい方向性に顧客のニーズがアップグレードされていくような追い風を感じることが、もしかするとあるかもしれませんが、それはタイミングが合っているということです。そうなると事業が拡大しやすい。だからタイミングが大事なんです。そして、実行力。本当に成長する会社はこの2つの力がすごく高い印象です。

もう1つは組織的な観点からで、成長する企業って“明るい”んです、会社が。
「業績がいいから明るいのでは」「業績が悪いから暗いのでは」と思う人もいるでしょうが、私の考えは「ニワトリと卵」でいえば「明るい=ニワトリ」です。

今の皆さんのフェーズでも起こり始めてるかもしれませんが、ストレッチした事業計画になっていくにつれて、理想と現実のギャップ、つまり「できていない」ことが目立つようになります。組織や人材が多様化するほど、より「できてない」が目につくようになりますが、皆さんならどうしますか。放置しますか。違いますよね。できていないことに対しては、「できてない」とはっきりと言わなければいけません。

理想と現実のギャップを埋めるべき時、雰囲気が暗い会社では、「言えない」。言ってはいけない雰囲気があるため、言葉にすると更に雰囲気が悪くなるから言えずに、放置せざるをえない。この流れは、会社の成長を止めてしまいます。もうひとつは「言うけれど、ネガティブな言い方になる」。これは負のオーラが組織に充満して生産性も下げていきます。

一方で、雰囲気が明るい会社は行動を促しやすくて、「こうした方がいいよ」と言った時に「ありがとうございます」という前向きな会話が生まれます。

もちろん、明るい会社なら絶対に大丈夫ということではありませんが、明るい方が課題を乗り越えやすいと思いますね。もし、これから佐藤さんが急に明るくなったとしたら、この話を聞いたせいかもしれません(笑)でも、それぐらい明るいことが大事だということを伝えたいですね。

組織が成長するには、数字に表れない「質」を常に意識することが必要

社員からの質問②:冒頭でニーリーの現在に関して予見できていたというお話もありました。今、弊社は日々チャレンジをしているところですが、これから直面するだろう課題があれば教えてください。

村上氏:

まずは事業をグロースさせることに現場も経営もフォーカスしますが、その後もしなお成長する会社となるためには、「質」の向上に取り組めるかどうかです。プロダクトの質、顧客設定の質、データや組織の質など、色々ありますが質を向上させることを放置すると、かなりの確率で成長が頭打ちします。これは確実に予見できるので避けてほしいですが、この課題を乗り越えられない会社が多いのも現実です。

とくに、カオス期からグロース期へ変遷していく中では、あらゆる成長が同時に起こり質に対する制約も増えていきます。質を高めながら成長するには、制約を常に見直していく必要がありますが、そこで大事なのが現場での違和感です。もし皆さんが、同じ課題に同じクオリティで向き合うことがこの1年続くようなら、逆にリスクとなるので、違和感を伝えるようにしてください。もちろん、口で言うほど簡単なことではありませんが、少なくとも、佐藤さんは現場から伝えられた違和感を放置するような人ではないので、現場の皆さんは意識して何かあれば伝えるようにしてほしいですね。

中には、グロース期だから「質が追いつかないのも仕方ない」という声もあるかもしれませんが、この「仕方ない」が未来の課題に繋がります。だから違和感があれば早い段階で潰すことを常に意識するようにしてほしいですね。「質」は数字に表れません。KPIを例にとると、アポ数は可視化できますが、アポの質はKPIに表れません。売上の質、採用の質も同様です。

質は可視化しづらいために軽視されがちですが、感覚では分かっていることが多いので、経営側にフィードバックしていただかないと、乗り越えることが難しい課題だと思います。

高橋:ありがとうございます。最後にこれからのニーリーに期待したいことについて、メンバーへメッセージをお願いします

村上氏:

ニーリーは、皆さんが思ってる以上に順調だと思います。他のスタートアップで成長している会社と比較しても、そう言えますね。ただ、順調だからといって目線を下げないでほしい。本当に突き抜けるぐらい、ハイクオリティーな会社になれるチャンスがあるので。

今後の日本は、モビリティ、地方のDX化、エネルギー問題、脱酸素、EV化など、いろんな課題に向き合わなければなりません。何度も申し上げているとおり、ニーリーはインフラになる可能性があるので、日本が抱える課題に対しても貢献できると思います。自分たちのことを過小評価せずに、ポテンシャルのある会社だと自覚を持って取り組んでいただけることを期待したいです。

高橋:

貴重なお話をありがとうございました!


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採用特設サイト:https://jobs.nealle.com/

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