~VC対談~ VCが考えるニーリーの成長性
この度、株式会社ニーリーは、SBIインベストメント株式会社、Logistics Innovation Fund投資事業有限責任組合など計4社を割当先とした出資と、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社SBI新生銀行、株式会社三井住友銀行など大手銀行からの融資により、総額16億円の資金調達を実施しました。これにより、創業からの累計調達額は39億円(※2)となりました。
※2023年5月31日付 プレスリリースより
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000083.000045188.html
今回は、セイノーホールディングスとSpiral Innovation Partnersが共同で組成し、物流周辺領域のスタートアップへの投資を行うファンド「Logistics Innovation Fund」でシニアアソシエイトを務める植木修造氏と、ニーリー財務企画部長の島本大地との特別対談を実施し、ニーリーとの出会いや出資を決めた理由、今後期待したいことについてお話しいただきました。
Logistics Innovation Fund/Spiral Capital 株式会社
植木 修造氏
2020年1月、Spiral Capitalに参画。当社への参画以前は、2018年4月ドリームインキュベータ入社。主に戦略コンサルティング部門にて、ヘルスケア、エネルギー、保険など様々な業界の大企業における新規事業の企画・立案支援に従事。並行して、大企業からのカーブアウトやベンチャー企業の資金調達支援も担当。それ以前は、ZS Associatesにて、大手製薬企業の営業・マーケティング戦略に関するコンサルティングに3年間従事。東京大学法学部卒。
株式会社ニーリー 財務企画部長
島本 大地
2012年、KPMG有限責任あずさ監査法人に入所。金商法・SEC登録企業等のグローバル企業の監査業務、DD等のアドバイザリー業務に従事。2018年、株式会社ドリームインキュベータにて、新規事業子会社のコーポレート責任者として管理業務、事業売却/MBO等のM&Aを主導。翌年より同社プライベート・キャピタルグループの創業メンバーとして、起業家向けの資金調達・M&A/PMIのアドバイザリー業務を行う。2021年、株式会社ニーリー入社。資金調達及び上場準備を担当している。
ニーリーへ出資に至るまでの経緯
島本:
本日はよろしくお願いします!前職からの付き合いなのでかれこれ5年以上になりますね。
植木氏:
しかも同日入社でしたし、当時を振り返ると懐かしく感じますね。今日はよろしくお願いします!
ニーリーを初めて知ったのは、島本さんから転職先の話を聞いた時になりますが、月極駐車場のサービスだと聞いて、ニーズがありそうだけれど、領域的にはよくわからないというのが正直な感想でしたね。ただ、駐車場から派生して別の領域に切り込んでいけば大きな可能性がありそうだと当時から感じていました。
島本:
植木さんは、VCに転職された後にスタートアップ企業をいくつかご紹介した経緯もあり、物流・モビリティ領域にも詳しいことも分かっていたので、早い段階でご相談していました。その後ニーリーに入社して、2021年から出資の打診をさせていただいていました。これまで一緒に仕事もしていましたし、ニーリーでもご仕事できればと考えていたところはありますね。
植木氏:
苦楽を共にし、信頼できる島本さんが転職した会社だから、もちろん検討しますよね(笑)
2021年当時は、Park Direct事業がこれから実績を伸ばしていくフェーズだったことと、スタートアップ市場自体も盛り上がっており、ほかの案件との兼ね合いで具体的なアクションには至りませんでした。
当時を振り返ると、バーティカルSaaS一本でいくのは苦しいのではとの考えもありましたが、一方でPark Directが展開するサービスは、月極駐車場だけにとどまらずモビリティ領域に染み出していける可能性も感じていました。
Park Direct for Business(PD Biz)やEVの取組み、あとはフィンテックの領域など、様々な領域に展開できるポテンシャルがあり、今後それらの領域にどれだけ切り込んでいけるかが鍵だと感じていましたし、それさえ乗り越えれば、伸びる企業になるのではというワクワク感がありました。
出資の決め手は事業の成長力と人材採用力
島本:
今回改めて出資を決めていただいた背景を教えてもらえますでしょうか。
植木氏:
2021年の検討以降、事業がすごいスピードで成長していっている様子を目の当たりにできたことが大きかったです。
当時は、新しい事業戦略の方向性を打ち出したタイミングだったので、成果はこれからという段階でした。その戦略がうまく実行できるかどうかは、売上を大きく左右する重要事項だと思っていましたし、その後着実に戦略を実行し、成果を出し続けてきたことで出資に繋がりました。
またMRR(月次経常収益)成長率も、海外の有名SaaS企業を超えるような水準で伸びていましたし、約1年でこれだけの成長をしていることに大きな可能性を感じました。
植木氏:
また管理会社様の解約率についても低く抑えられ、通常バーティカルSaaSの解約率は月次1%未満に納まるのがベストだと思っていますが、売上が大きく伸長している中でも解約率が下がり続けていたことも大きく評価できました。
さらに、改めて事業の広がりに対する面白さも感じました。月極駐車場のマーケットは、SaaS単体でも十分売上を伸ばす余地がある巨大市場である上、管理会社だけでなく借主にもマネタイズするしくみがあり、マーケットプレイスのような要素を含んでいることにニーリーならではの特徴を感じました。
島本:
出資検討中に印象的なエピソードはありましたか?
植木氏:
主観的ではありますが、ピッチの後に議論をする際、聞かれた質問にすぱっと回答できるかどうかは投資家目線でよく見ています。普段から経営に対してどれだけ考えているかが伝わることもあり、意外とピッチがよくても、質疑応答の時間で違和感を抱くこともあるんですよね。その点、代表の佐藤さんはピッチはもちろん、追加の質疑応答もしっかり答えていた。よく考えて真摯に経営していることが伝わりました。
島本:
真摯に経営に向き合っているという点では、前職の経験の中でもこれだけ細かくKPI管理している会社はなかったと感じていますし、しっかりと経営課題を認識して、適切なKPIを設定・運用できている会社だと自負しています。
植木氏:
スタートアップは、大きな目標を立てたはよいものの、目標達成に必要なKPIを見ると非現実的で、大幅未達に終わってしまうケースも少なくありません。その点ではニーリーは適切なKPI管理のもとで地に足をつけた目標設定をしていると感じました。
また、プロダクトの開発も内製化していて、スピード感をもった開発体制があり、ものづくりへの熱い姿勢も感じました。
あと、こちらからリクエストしていないにもかかわらず(笑)、経営会議や合宿資料なども共有いただいたんですよね。
島本:
出資検討の中では、経営会議・合宿等で経営メンバーによる質の高いディスカッションができていることを、ご理解いただきたかった部分はありますね。このようなディスカッションを通じて形成されたフラットさは現在のカルチャーにも繋がっていると思います。
また、代表の佐藤をはじめ現取締役陣はエンジニア出身ですし、ものづくりへの思い入れは非常に強いですね。
特にここ最近では、順調に採用ができてきていることも功を奏したと感じています。
植木氏:
採用活動については私も気になっていました。
2021年に検討した際に、営業戦略を進めていく上での一番のネックは、サクセスチームのマンパワーが足りていないことだと感じていました。その状態を見事解消して、今では3倍近い人数になっていますよね。
なんだかんだで、スタートアップは採用ができる企業が勝つ側面もあり、ニーリーの採用力は大きな強みと感じていますが、どのように採用しているんですか?
島本:
採用で大事なことは採用広報などで目立たせていくことよりも、まず社内のメンバーのエンゲージメントを高めるための努力をすることだと考えています。Park Directのビジネスドメインは一見するだけでは中々わかりづらい部分もあると思っており、入り口で興味を持っていただく難しさはあります。だからこそ、さまざまな選択肢がある中で弊社を選択いただいた方には「この会社に入ってよかった、成長できた」と感じていただきたいですし、特に組織長レイヤーを中心に、メンバーの能力開発に対して並々ならぬ熱量を持っていると思っています。
その中で、2022年から人事ポリシーや人事制度を設計して、メンバーのみなさんにどういった期待をかけて、どういった機会を提供していくのか?について会社全体としての目線を揃えた上で、全社を挙げて能力開発に注力する組織カルチャーが育ってきたと考えています。このことが結果的に社内メンバーを通じて採用候補者さんにも伝わっているのかなと思います。
植木氏:
離職率も低く押さえられているのも素晴らしいですね。スタートアップは、アーリーから成長してミドルになるタイミングで、初期メンバーほどの熱量を持つメンバーが入社せず、組織に亀裂が走ってしまうことが少なくありません。そこをうまく乗り越えている印象があります。
ということで、改めて振り返ってみると、今回の出資の判断はほとんど悩みませんでした。通常は検討から投資実行まで3か月くらいかかるところを、約1か月で完了しました。2021年からの事業進捗を把握できていたことも大きかったですね。まるで既存の投資家のようですが(笑)。
駐車場を起点としたビジネスの可能性
島本:
今回は、「Logistics Innovation Fund」というセイノーホールディングスさんとスパイラルさんの共同CVCからの出資で、物流領域との連携も期待されてのことかと思います。
私たちからも、ラストワンマイル(最終拠点からエンドユーザーへの物流サービスのこと)の観点で、駐車場の利活用についてお話しさせていただきました。現在は各社が別々にエンドユーザーに配送していますが、例えば駐車場をハブとして活用し、そこで荷物を集約・共同配送するしくみにすれば、大幅な効率化も見込めるかと思います。このような点についてはいかがでしょうか?
植木氏:
おっしゃるとおり、物流業界では2024年問題に起因する労働力不足が懸念されています。物流業界は、今は別々の会社が各自配送しているものの、実際は配送先が同じケースもあります。2024年には労働力不足が深刻になる中、なんらかの対策は必須です。
ほかにも、物流業界にも確実にSDGsの波が来ており、EVのトラックも徐々に増えてきています。それこそセイノーホールディングスさんもSDGsに対する取り組みは温度感高く進めていらっしゃる。
駐車場というのは、住宅地の中や商業施設など基本的には人が集まる便利な場所にあると思うんですよね。それらを拠点として考えた場合、SDGsの文脈で、EV充電拠点としての活用の可能性は大いにあると思っています。
加えて、フードトラックを始めとした小売拠点のような活用もできるかな、とか、
食べ物以外にも、車両を活用した移動式ヘルスケアサービスも良いかなとか、駐車場を起点としたさらなるビジネス展開は注目していきたいですね。
島本:
足の長い話ではありますが、十分に実現できる未来ですし、中長期的に考えていきたいですね。
最後に、植木さんからこれからのニーリーに期待したいことを教えてください。
植木氏:
長期的な観点では、先ほどお話したように色々な可能性を秘めたプラットフォームになっていくと思っています。そのためにも、まずは足元のPark Directを伸ばしていくのに注力していただきたいですね。クライアントの数や駐車場の掲載台数が今後もどんどん増えていけば、あらゆる面で事業が大きく前進すると考えています。これからの成長を期待しています。
島本:
ありがとうございます。ご期待に添えるよう、これからも社員一同励んでいきます。